サム・アルトマンは、スタートアップ創業者にとってアイデアの創出が極めて重要だと強調しています。成功する創業者は自然に多くのアイデアを生み出し、創造性や楽観主義、型破りな発想を育む環境で活躍するとのことです。また、未来志向の思考や技術的変化の把握が重要だと指摘しています。
これからスタートアップを始めようとしている人が最もよくする質問は、「どうやってスタートアップのアイデアを思いつくのか?」です。次に多い質問は、「なにかアイデアはありませんか?」というものです。
しかし、創業者にアイデアを与えることは、ほとんどの場合うまくいきません。新しいアイデアを生み出すことは、スタートアップの創業者にとって最も重要な素質の一つです。スタートアップを経営する中で、多くの新しいアイデアを生み出す必要があるからです。
かつて、YCは「良さそうな創業者だがアイデアをもっていない」というグループに資金を出すという実験を試みたことがあります。私は、この「アイデアなし」グループにいた会社はすべて失敗したと考えています。結局のところ、優れた創業者には何にでもたくさんのアイデアがあるのです。そのため、創業者になりたいのに会社のアイデアが思いつかない場合は、まず最初にアイデアを生み出す力を磨くべきです。
では、どうすればそれができるのでしょうか?
重要なのは、適切な環境に自分を置くこと、そして適切なタイプの人々と共にいることです。未来に対する感覚が鋭く、ありえないような計画をも許容し、楽観的で、創造的な知性を持ち、非常に多くのアイデアを次々と生み出す人々と一緒にいるべきです。こういった人たちは、一般的な人が抱える制約に縛られず、あまり多くのフィルターをかけず、他人の評価をさほど気にしない傾向があります。
最良のアイデアにはある種の壊れやすさがあります。多くの人は、馬鹿げて聞こえるという理由で、そうしたアイデアについて話し始めることすらありません。おそらく最も重要なのは、悪いアイデアを口にしても馬鹿にされないような人々の周りにいることです。そして自分自身も決して自分のアイデアを馬鹿だと感じないないことです。
あなたの野心を小馬鹿にするような、世の中に疲れ切っている人たちからは離れましょう。残念ながら、こうしたタイプの人は多いものです。しかし、彼らは過去に囚われているだけです。私たちは未来に生きることを目指すべきです。
20年先の未来に自分を投影し、そこから逆算して考える能力を養うことが大切です。自分を信じてください —— 20年は長い時間です。その未来についての考えが非常に急進的に思えても構いません。
もう一つの方法は、現在進行中の最も重要な大きな変化を考えることです。世界はどのように根本的に変わりつつあるのか?その変化の最前線を見極め、それが生み出すチャンスを見つけられないでしょうか?2008年から2012年にかけての携帯電話の爆発的な普及は、その代表的な例です —— 私たちは次の大きな変化に向けて準備すべき時期に来ています!
このような大きな変化の中では、世界は非常に速く変化するため、大企業は、迅速かつ集中的に動くスタートアップに敗れることがよくあります。(ちなみに、本物のトレンドと偽のトレンドを見分ける能力を磨くことは有用です。重要な判断基準は、新しいプラットフォームが少数の人々に頻繁に使用されているか、それとも多くの人々にわずかに使用されているかです。)
もし昨年にはできなかったのに、今年ならできることを思いついたら、それに注目すべきです。そこには素晴らしいスタートアップのアイデアの種が隠れているかもしれません。特に、来年では遅すぎるという場合は要注意です。
「これは確実に起こるだろう。ただ、それを実現するのが私たちかどうかは分からない」と言えるのであれば、それは良い兆候です。私にとってUberがまさにそうでした。初めて利用した後、従来のようにタクシーを呼ぶ時代はもうすぐ終わるだろうと確信しました。ただ、Uberがこの分野で勝利を収めるかどうかは確信が持てませんでした。
アイデアについて考え始めた段階で自分に問いかけるべき良い質問のひとつは、「もしこれがうまくいったら、大きな成功につながるだろうか?」というものです。世の中には多くの優れたアイデアが存在しますが、スタートアップが大成功するための固有の利点を持っているものは限られています。ほとんどのビジネスは、成長過程で継続的に価値ある優位性を積み重ねていくわけではありません。なぜそのアイデアがその特性を持ちうるのか、早い段階から考えることが重要です。FacebookやAirbnbの場合は明白ですが、多くの場合、もっと些細な形で存在しています。
また、自分に何が適しているかを考えることも大切です。ただし、純粋な内省だけでは難しいことが多いです。理想的には、メンターや一緒に働いたことがある人に、あなたが特に得意とすることは何かを尋ねるとよいでしょう。創業者と会社の相性は、製品と市場の適合性と同じくらい重要だと考えるようになりました。
最後に、アイデアをテストする良い方法のひとつは、多くの人がそれを悪いアイデアだと思う理由を明確に説明できるにもかかわらず、あなたがそれの良さを理解していることです。
これは、2018年に中国で開催されたYCイベントで私が行った講演のためにまとめたメモです。投稿を勧めてくれたエリック・ミジコフスキーに感謝します!
このメモは、私が主にスタートアップについて考えていた時期に書いたものですが、今は主にAI開発を考えています。このメモの特に第5〜9段落が、どれほどAI開発にも当てはまるかに驚いています。